気持ちが沈みそうな日々が続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
さらに気持ちが沈みそうな外伝を更新いたしました。『無地の旗』~P30です。
これにてハル編「ひび割れた世界の」は終了です。
そして、この外伝もあと一編、残り10ページとなりました。
5月中には更新できればと思います。
以下、本編であえてぼかした部分をあとがき的に解説させていただきます。更新分を読了済みで、興味を持たれた方は、ぜひもう少しお付き合いください。
ある家族と兄弟の、悲劇の話。
本編5話の回想シーンでハル本人が話していた通り、彼は実の兄に売られる形でラミレス家へ行くことになりました。
じゃあ、そもそもどうして、お兄ちゃんは弟を領主の家――つまりラミレス家に売り渡すという行為に走ったのか。彼の根幹にどういう思いがあったのか、という話です。
お兄ちゃんはもともと、年の離れた弟のことがあまり好きではありませんでした。彼が魔力持ちで、かつあまりに純粋だったからです。
両親は魔力なんてほとんどなかったですし、それはお兄ちゃんも同様でした。町には魔術師がおらず、そういった存在になじみがなかったのです。
そこへきて、たくさんの魔力を持った弟ができました。
彼はときどき、他の人々には分からないものを見ていたり感じていたりしたようです。そんな弟の言動が、お兄ちゃんとしては気味が悪くてしょうがなかった。
かといって、かつては、純粋な子どもを邪険にすることもできませんでした。しかも、両親は魔術のことが分からないなりに、弟に対して心を砕いて接していました。
なんで、父さんと母さんは、ぶきみなあいつばかり構うんだ。そんな思いがお兄ちゃんの中にありました。
そして今回のお話のほんの一年前に、二人の両親が他界します。
理由はハルの魔力の暴走に巻き込まれたためです。
癇癪が悪化して魔力を暴走させたハルを、両親は必死で止めようとしました。しかし竜巻の中心に生身で突撃していくようなものでしたから、止めることもできず、二人は魔力に切り刻まれて亡くなってしまいました。
この事件をきっかけに、お兄ちゃんの中にあった苦手意識と嫉妬心は、憎しみへと変わりました。
変わらず無垢な少年を「両親を殺した敵」としか見れなくなってしまったのです。
ハルが化物呼ばわりされるようになったのも、この事件以降です。
お兄ちゃんは、今回また弟が暴走を引き起こしたことを知り、ひどく恐怖しました。しかし同時に「こいつと離れるいい機会だ」とも思ったのかもしれません。
その思いが最後のシーンに繋がっている……のだと思います。
この家族にとって、もう一つよくなかったのは、彼らが住んでいた町がラミレス家の管轄領だったことでしょう。
もし、カーライル領――当時エミリオの父が治めていて、『インドラ』が魔術に関わることに対処している地域――だったなら、彼らのたどる道は、また少し違ったものになっていたかもしれません。
さて。残すはユキ編です。ユキはほかの面子と経歴が少し違うので、話の毛色もこれまでと違う感じになっています。主人公もやっと登場します。
お楽しみに。