第三章 火の民の詩5

神代より 人は天を目指した
翼を借り あるいは作り 幾度も天に挑んだ
そして 人は幾度も 天に焼かれた

久遠の時代を経て 人はまた天を目指した
ふるさとの星が 藍色に輝くのを見て
人は 天の黒い翼をにらんだ

黒のうちから 白へと抜けた
人はそこを 真の天と名付けた
人は旅の果てに 時計を破壊した

星霜を経て 傍観の地が生まれた
箱庭から 箱庭を見続けた
傍観者は 古き箱庭のすべてを見た

箱庭を 見続ける者たちがいる
箱庭に 怒りをぶつける者たちがいる
二種の石は混在し 清水を濁らせた

やがて傍観者は 分裂した
見守り続けるべきと 言うものと
箱庭に手を加えるべきと 言うものと

傍観者たちは 言葉を交わした
幾度も幾度も 言葉を交わした
それでも言葉は 交わらなかった

傍観者の一人が 白に溶けた
白はそして 影となり
古き箱庭へ 降り立った

三人の傍観者が また影となった
天に残った者たちは 驚きざわめいた
狂騒の中で 影をうらやむ者がいた

また三人が 影となった
古き箱庭に 天の者が散らばった
そして箱庭に ひびが入った

天の者たちは 地へ降りた
白き姿を 追いかけた
影となった者たちは 逃れ隠れ抗った

地に降りた者は 人に依った
地に身をひそめ 剣を作った
力と剣が 箱庭でぶつかった

天は乱れ 地は荒れた
箱庭の理は ねじれて歪んだ
箱庭が壊れる前に 天の者たちは身をひいた

影はまた身をひそめ 箱庭に剣が残った
剣は人の手に渡り 箱庭を歪め続けた
天の者たちは剣を知り 地への道を開いた

傍観者は 天使となった
見えぬ翼をはばたかせ 五人の天使が地へ降りた
天使は箱庭へ飛び回り 今も剣を捜している